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すべて取り違えてみた声と体 水町綜助さん
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=183643
このぼんやりとした読後感が妙に心地よくて、おもしろい詩でした。タイトルからもう、内容をそのまま鵜呑みにしていいのかまよってしまうのだけれど、そういう翻弄されることがけっして不快ではないラインでふみとどまっているあたりが、水町さんのたくみなところだとおもう。
なんとはなしに、ふとあのときのことを思い出したりとか、わけもなくだれかの顔が浮かんでくるとか、日々を生きていくなかでたまに遭遇するあのぼんやりとした感覚によく似ています。思考をなぞると、こんなかたちになるのではないか。とおもわれるような詩でなつかしいような不思議な気持ちになりました。
やわらかで丁寧な語り口がこのうすぼんやりとした印象のひとつをかたちづくっているようにおもいますが「あすの朝をまちな」で、どきりとさせられる。緩急や強弱をさらりと忍ばせるあたり、見事だなとおもった。ほかにも「ぼた 音もなく土煙」付近での反復、「*」によるシーン変更など、ありがちなんだけれども実は高度なわざなんじゃないかというものを織り交ぜてあって、すごいぞと感じました。
フレーズでは「その午後は全てでっち上げの15:30でした」のところ。それまでのひかえめな可笑しさが、すきっと上品なかっこよさでおさまってしまう一文だとおもう。それと「ヤマカガシは咬む蛇だった… 毒も飛ばす…なんてことだ…」の2行は本文とはなれた場所にあって、それがまんがのふきだしのようで新しく、ぐっときておもしろかった。
石畑由紀子
ことこ